2025年7月9日水曜日

酒・たばこ税

酒・たばこ税は“健康被害還元税”に

酒とたばこは、日本の病気と死亡の大きな原因です。2019年、日本のたばこ起因の超過死亡は年間21.2万人、受動喫煙だけでも約1.5万人が命を落としているとされています。
アルコールも深刻で、アルコール寄与死亡は2017年に5.8万人、経済損失は少なくとも年4.1兆円と見積もられています(さらに高い推計もあります)。

一方で税収をみると、たばこ税(国・地方)は概ね年2兆円、酒税は約1.2兆円で、合わせて3兆円強にとどまります。健康被害と損失は社会保障費を圧迫しており、現行の税収を明確に上回っている状況だと受け止めています。

そこで、発想を少し転換できればと思います。

酒税・たばこ税を段階的に引き上げ、その「全額」を社会保障(医療・介護・年金・子育て)へ恒久的にひも付けることをご提案します。根拠は次の3点です。

健康効果が期待できます

日本のデータでも、段階的なたばこ値上げは禁煙を促し、再喫煙を減らしたとされています。価格を上げれば消費が下がるという傾向は、実証研究でも繰り返し示されてきました。

財政の筋が通ります

酒・たばこが生む外部不経済(医療・介護・労働損失・事故等)は大きな規模です。喫煙の社会的損失は少なくとも年4.3兆円とされます。損害に見合う負担として、税収を被害の現場=社会保障へ優先的に配分する考え方は、納得感があるのではないでしょうか。

財源の安定化につながります

酒・たばこ税はすでに年3兆円超と一定の規模があります。目的税化によって医療・介護のベース財源を厚くできそうです。追加増税分を禁煙・断酒支援や依存症治療、未成年対策に機械的に配分すれば、将来の医療費抑制にもつながる投資になると考えています。

“嗜好”という名で長く特別視されてきた面もありますが、現実には社会保障費を押し上げる大きなリスク要因です。被害の大きさ(死者21万人+5.8万人、損失は数兆円規模)に対し、税収(3兆円強)はやや小さめに映ります。増税と全額ひも付けは、道徳論ではなく、財政と公衆衛生の観点からの素直な選択といえそうです。病気のツケを未来に回さず、今ある税制を「いのちの財源」へとなればうれしいことです。


たばこ(20本入・税込・円換算)
日本: 600円
英国: 2,090円
フランス: 1,859円
ドイツ: 1,345円
米国(平均): 1,274円
オーストラリア: 3,326円
ニュージーランド: 2,747円
シンガポール: 1,752円

ビール税(500mL・アルコール5%相当の税額・円換算)
日本: 90円
シンガポール: 223円