2025年6月5日木曜日

雑用に「いちいちやる気を待つ人」と、「やる気がなくても淡々と処理できる人」

雑用に「いちいちやる気を待つ人」と、「やる気がなくても淡々と処理できる人」の心理的・性格的な違いは、動機づけ、自己制御、成熟度、そしてアイデンティティの在り方に関わっています。以下に、心理学の理論や知見をもとに、その違いを整理します。

1. 動機づけのタイプの違い:内発的と外発的と同一化的動機づけ
●やる気を待つ人:
内発的動機づけ(intrinsic motivation)が非常に強く、「意味のあること」や「面白いこと」でないとエネルギーが湧かない。雑用のような外から与えられる無味乾燥な作業には、価値を見出せず、行動に移せない。
「自己の納得」が行動の前提条件となる傾向がある。
→ この人は、自律性志向が強いが、行動の柔軟性が低い。

●淡々と処理できる人:
雑用であっても、「役割」「責任」「習慣」として同一化的動機づけ(identified regulation)が働いている。
自分の価値観の中で、「やるべきことはやる」という合理的な内面化ができており、やる気の有無に左右されにくい。
行動の価値を感情ではなく意味で判断できている。
→ この人は、成熟した内的モチベーション構造を持ち、自己統制が高い。

2. 自己制御能力(Self-Regulation)の違い
●やる気を待つ人:
感情や気分と行動が強く結びついており、「今の自分の気分」を正当化する傾向がある(短期的自己調整)。
先延ばし傾向や「モチベーションが出たらやる」といった衝動的・情動依存的な行動傾向がある。

● 淡々と処理できる人:
感情とは別に「遂行するべきこと」として分離処理が可能。
自己統制力(self-control)が高く、感情と行動を切り離す能力を持っている

3. 自己アイデンティティの確立度合い
●やる気を待つ人:
自分の感情と行動が一致していないと「嘘をついている」ような気がしてしまい、自己同一性へのこだわりが強い。
「こんなことをやっている自分は、自分らしくない」という内的違和感が、行動を妨げる。

● 淡々と処理できる人:
自分のアイデンティティと、目の前の行動(たとえ雑用でも)を柔軟に統合できる。
「この程度のことでは自分の価値は揺らがない」という自己概念の安定性を持っている。

4. 成熟度と社会化の度合い
● やる気を待つ人:
自己中心的な視点が強く、社会や組織の全体構造を自分の気分より後回しにすることが難しい。
他者との関係性や役割の自覚が未熟なままの場合、「納得できない=やらない」という未社会化な態度をとりやすい。

● 淡々と処理できる人:
他者との関係性を踏まえた判断ができる。自分の「気分」よりも、「他者への影響」「全体の進行」などを優先できる。
つまり、より成熟した社会的存在として振る舞っている。

5. 補足:行動経済学の視点から
行動経済学的に見ると、「やる気を待つ人」は「現在バイアス(present bias)」が強く、目の前の快不快に過度に反応し、「未来の自己」や「長期的成果」に配慮しにくい。
一方、「淡々とこなせる人」は、将来的な価値や秩序の維持に投資できる人だと言えます。