2024年12月13日金曜日

人口減少社会とスキリング

イーロン・マスク氏は、日本が少子化を克服できなければ滅びると評しました。この発言は極端に聞こえるかもしれませんが、警鐘を鳴らす意図があったのかもしれません。むしろ、現状を「手遅れ」と表現しても過言ではないでしょう。

現在の日本社会では、子どもを産み育てることが「かわいそうなこと」や「社会進出していない悲しい状態」と無意識に捉えられているように見えます。「子どもを産むことはスキルがない行為だから、スキルを身につけろ」といった考え方が根底にあるのかもしれません。このような認識を改めない限り、少子化の改善は難しいでしょう。

健康寿命が延び、近い将来には定年が70歳に引き上げられる可能性があります。そうであれば、30歳や35歳からでも十分に社会進出が可能です。しかし、妊孕性(妊娠する能力)の高い時期に過労やスキル習得を求める社会制度が、妊孕性の低下を招いていることは否めません。また、ストレスがなくても30歳を過ぎると妊孕性が低下することは広く知られています。

男女の役割分担は人類の進化の過程で形成されてきましたが、近現代においてフェミニズムが開花し、結果的に深刻な少子化問題を引き起こしています。人類の長い歴史の中で、子どもを持たない社会制度を選択した部族は自然淘汰されてきたと考えられます。近代において「子どもを持つと損をする社会」を構築してきた背景には、為政者の人口爆発への恐れが潜在的にあったのかもしれません。

少子化の影響は、まず教育産業全体に大打撃を与えると予想されます。「労働(Labor)」という言葉には「分娩」という意味も含まれますが、日本語にはそのような表現がありません。少子化を回避するためには、「子どもを産み育てること」を「立派な労働であり、社会進出の一形態」として捉え、産業の一つとして認識する必要があります。そのためには、ハンデではなくアドバンテージとなる制度設計が求められます。

具体的な政策案としては以下が考えられます:

・母子手帳交付後数年間の所得給付
・大学までの教育費無償化
・フランスの成功事例を参考にした税制改革(n分のn乗方式)
・出産1人につき女性の所得税率を生涯5%オフ
・出産1人につき女性の所得控除を生涯100万円オフ(103万円の壁を解消)
・出産1人につき国家試験合計点を5%加点(最大20%まで)
・大学入試における出産1人につき生涯20点加算(教育産業資本の再活用)
・子育て終了後の雇用率や管理職採用率の設定と、それを達成した企業へのアドバンテージ付与

これらの選択肢がある中で、恒久的な制度改革を行わず、一時的なバラマキ政策で対応するのは残念です。出産・育児後の勤労意欲を高め、企業側の負担を軽減する税制的な実質昇給メリットが重要ではないでしょうか。

「子どもを産むことには価値がない」という潜在意識が制度化や立法化を阻んでいるとすれば、それを打破する必要があります。さもなければ、中国やインドから移民を受け入れ、エネルギーだけでなく人口も海外に依存するという選択肢しか残らないのかもしれません。

確かに、結婚しない人や子どもを望まないカップルもいます。それぞれの選択が尊重される社会であるべきですが、老若のバランスが取れた人口構造があってこそ、相互扶助の寛容な社会が維持されるのです。

出生率2.0を目指すのであれば、まずは1.6を目指すのではなく、3.0を超える勢いのある政策を打ち出すべきです。そのような取り組みを行って初めて、2.0に近づくことができるのです。しかし、現状では何も変革せず、衰退を受け入れる姿勢が続いていると言わざるを得ません。