2025年7月4日金曜日

塩とダイエット

🧂塩は“敵”ではなく“エンジンオイル”だった

――適度な塩分が代謝を動かし、食欲を整える理由

「塩は控えめに」。
健康の常識として長く言われてきた言葉です。
しかし、極端な減塩を続けると「だるい」「冷える」「食欲が止まらない」「体重が落ちにくい」と感じる人が少なくありません。
実は、塩(ナトリウム)は代謝とホルモン、そして食欲を調整する“エンジンオイル”のような存在
少なすぎても、多すぎても、体はスムーズに動けなくなります。


⚙️ 1. 細胞を動かす「電気の力」

人の体のすべての細胞は、内と外で電気的な差を持っています。
この電位差を作るのが、ナトリウムとカリウムです。
「Na⁺/K⁺ポンプ」と呼ばれる仕組みが1回動くたびにATP(体のエネルギー通貨)を使い、筋肉を動かし、神経を伝え、体温を生み出します。

塩分が不足すると、このポンプの動きが鈍くなり、体全体の代謝速度が低下
スマホでいえば「省電力モード」に入ったような状態になります。
エネルギー消費が落ちる一方で、体は「燃えにくく」「冷えやすく」なるのです。


🔥 2. ホルモンのバランスが整う

塩を抜きすぎると、体は「塩を失っている」と勘違いして、
副腎からアルドステロンコルチゾールといったホルモンを分泌します。
これらは生命を守るための“緊急モード”ですが、長く続くと血糖値が上がり、筋肉が分解され、脂肪が溜まりやすくなります。

一方、適度な塩を摂るとこの緊張モードが解除され、ホルモンが安定。
代謝が“平常運転”に戻ります。
塩を足したときに「体が軽くなった」と感じるのは、このホルモンバランスの回復によるものです。


💧 3. 血流がめぐると脂肪が燃える

脂肪を燃やすには酸素が必要です。
酸素を運ぶのは血液。
その流れを支えるのが、ナトリウムを含む体液量です。

減塩を続けると血液量が減り、血圧が下がり、末端まで酸素が届きにくくなります。
これでは脂肪を「燃やしたくても燃やせない」状態。
逆に、適量の塩を摂ると循環が戻り、手足が温まり、体が自然にエネルギーを使い始めます。
塩は「血を流し、熱を生む」ための小さなスイッチなのです。


🍽️ 4. 塩は“満足スイッチ”でもある

意外なことに、適度な塩分は食欲を抑える方向にも働きます。
そのメカニズムはいくつかあります。

まず、ナトリウムが整うと脳の「不足警報」が解除されます。
ナトリウムが足りないと、脳は危険信号として**食欲ホルモン(グレリン)**を増やし、何かを食べたくさせます。
塩を摂ることでナトリウム濃度が正常化し、グレリン分泌が下がり、「もう足りている」という感覚が生まれるのです。

また、減塩状態ではアルドステロンが増え、体が「エネルギーを溜めたいモード」に入り、糖質や脂質への欲求が強くなります。
塩を摂るとこの連鎖が止まり、飢餓モードから抜け出せる。
さらに、味覚神経の伝達が安定することで「味がちゃんとおいしい」と感じやすくなり、少量でも満足しやすくなります。

結果として、塩は“味付け”ではなく、“満足のスイッチ”として働くのです。


🧠 5. 「塩=悪」という思い込みを手放す

もちろん、塩の摂りすぎは高血圧や心血管疾患のリスクを高めます。
しかし、不足もまた代謝を止め、ホルモンや食欲を乱す原因になります。
重要なのは「量」ではなく「バランス」。

1日3〜6g程度の塩分を、**ミネラルを含む自然な形(味噌、梅干し、海塩など)**で摂るのが理想的です。
ナトリウムだけでなく、カリウムやマグネシウムとのバランスも整えると、体はより安定して動きます。


⚖️ 6. “エンジン”が回る感覚を取り戻す

塩を少し足しただけで頭が冴える、体が温まる、気分が明るくなる。
それは錯覚ではありません。
体の中で電気が通り、血液が流れ、ホルモンが安定するサインです。

私たちの体は、常に動き続けることで健康を保ちます。
その動力の潤滑油こそがナトリウム――塩なのです。


💡まとめ

塩を敵にせず、味方につける。
それが、代謝のエンジンを再点火し、
“食べすぎないで燃える体”をつくる、最もシンプルな方法です。

   ※高血圧の方は塩分の取りすぎには注意しましょう。